自閉症者の記憶・感情・未来思考のメカニズムを解明する 「記憶」と聞くと、どのようなことをイメージするでしょうか。 「どうすればたくさん憶えることができるのか」「もの忘れを防ぐにはどうすればよいのか」といったことが思い浮かぶかもしれません。しかし、記憶には単に情報を蓄えるだけではない役割があります。たとえば、「昨日、友達と映画を見に行ってきた」という記憶は、会話の話題となり、他者とのコミュニケーションを促します。 また、記憶は過去だけでなく、未来にもつながっています。 ある研究によれば、人は1日のうち平均して「59回」未来のことを考えていると報告されています。睡眠時間を8時間、起きている時間を16時間とすれば、およそ「16分に1回」は未来のことを考えている計算になります。このように未来について考えること(未来思考)は、自分の予定や行動を計画するだけでなく、「この問題は週明けに先生に相談しよう」と考えることで不安を和らげるなど、感情をコントロールするうえでも役立ちます。 さらに、最近では「感情のコントロール」についても研究を進めています。 従来、感情のコントロールについては、「その人が自分の感情をどの程度うまく調整できるか」という個人の能力に焦点が当てられてきました。しかし近年では、私たちの感情は自分一人で調整されるものではなく、他者との関わりによっても変化することがわかってきています。例えば、親の機嫌がよいと子どもの機嫌もよくなるように、人の感情は周囲の人から影響を受けます。 私は、こうした記憶・未来思考・感情のはたらきが、自閉スペクトラム症のある方ではどのような特徴をもつのかについて、当事者の方々にご協力いただきながら研究を進めています。 |