教員情報(岸本 吉弘)

氏名・職名 岸本 吉弘(きしもと よしひろ,Yoshihiro Kishimoto)教授
メールアドレス yoshiki [at] kobe-u [dot] ac [dot] jp
学位 修士(造形)(武蔵野美術大学)
研究分野 絵画表現
[学部] 担当 国際人間科学部 » 発達コミュニティ学科 » アートコミュニケーションプログラム
[大学院] 担当 人間発達環境学研究科 » 人間発達専攻 » 表現系, 表現創造
研究者情報 神戸大学研究者紹介(KUID)
教員サイト
研究紹介

現代の絵画― 抽象表現をとおして追求する絵画の本質像

私は、絵画とはあくまでも「フォーマリズム的な文脈(造形的かつ客観的な思考)」から、描かれ語られるべき存在である、と考えています。しかし現代における絵画の有様は、それとはかけ離れ、サブカルチャーイメージの流用やデジタル的な産物として表出することが多く、それらは嗜好的な趣味として流布しています。私はそうした現在的な現象に、敢えてフォーマルな表現実践と、それに裏打ちされた理論で、挑もうとしているのです。 歴史的に絵画はかつて「窓」でした、その窓から見える景色に、物語や宗教や哲学的な要素を描き、その意味や情報を伝達してきました。19世紀後半以降の絵画は宗教性から離れ、自立し、絵画独自の純粋な道を模索します。そうしたなかで私が専門とする「抽象絵画」も登場するのです。その抽象絵画もその後に発展を遂げ、挙句には物体である「壁(ミニマル)」にまで辿り着くのです。
私はそれらの歴史観を踏襲した上で、モダニズム絵画の原理的な造形要素(構造)である「水平」や「垂直」に強い関心を抱いています。近年では「垂直」を軸に展開する大作絵画を中心に創作し、同時に研究も進めています。私にとって創作と研究は、車の両輪であり、かつ相互補完する関係なのです。
また更に研究面では、絵画が歴史的に「壁」に至る直前の形式でもあり、抽象表現の究極の様態である「オールオーバー(均質空間)」に注目し、そこに絵画の本質的な価値を見出そうとしています。それは絵画の構成的な「終わり」と「はじまり」が同居している豊かな「マトリックス(母体)」とも言えます。なかでも「アメリカ抽象表現主義」の代表格でもある「画家ジャクソン・ポロック」などに代表されるオールオーバー絵画が、どう誕生し、どう継承され、更に展開を遂げたのか?遂げつつあるか?を、多角的に考察・検証しています。

 

当研究室で研究をする場合に、学部で学んでおいてほしいこと

基本は、美術や芸術表現における専門性を学ぶと同時に、それを取り巻く背景や社会、他分野との汎用性も知っていてほしい内容です。専門性とは美術史における知識もそうですが、創作実践を軸とした表現力(絵画でも立体でもデザインでも)もそうです。そうした知識や経験値をベースにし、それらを大学院での研究に効果的につなげてほしいのです。そうしたなかで培われるのが、作品に肉薄する「批評的な眼力」です。この「観察・洞察する力」が、何よりも表現分野では重要となります。そこには趣味的な判断を超えた、本質的な価値判断が内在します。

教員写真 Yoshihiro Kishimoto