教員情報(大田 美佐子)

氏名・職名 大田 美佐子(おおた みさこ,Misako Ohta)教授
メールアドレス misaohta [at] kobe-u [dot] ac [dot] jp
学位 PhD (University of Vienna)
研究分野 音楽文化史、音楽美学
[学部] 担当 国際人間科学部 » 発達コミュニティ学科 » ミュージックコミュニケーションプログラム, 社会エンパワメントプログラム
[大学院] 担当 人間発達環境学研究科 » 人間発達専攻 » 表現系, 表現文化
研究者情報 神戸大学研究者紹介(KUID)
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研究紹介

「耳」を傾けて歴史と繋がる - 対話的音楽文化史の試み -

「音楽は見えない」。音は「見えない」けれど、何世紀も前の音楽から私たちはメッセージを受け取り、その時代の思考を聴き、時代の空気を感じとっています。音楽学という学問の根底に、目に見えないもの、時とともに移ろいゆくものに耳を傾け、それを言葉で伝えるというシンプルな使命を感じています。

 現在は、卒業論文から継続して追ってきた亡命作曲家、クルト・ヴァイルのオペラ、ミュージカルなど多様な音楽劇作品の研究を本にまとめる一方で、ここ数年はヴァイル研究での「亡命・越境」的観点からの発展として「越境的・対話的音楽文化史」の分野を開拓し、ハーバード大学のキャロル・J.オージャ教授との共同研究を行ってきました。そこでは、異なる文化や社会的背景の共有という視点から、占領期や戦後の音楽文化史を調査・研究しています。2019 年には、オージャ教授ら四人の共同執筆で、専門誌「American Music 」より「Marian Anderson’s 1953 Concert Tour of Japan: A Transnational History」を英語と日本語で発表しました。この研究は1953 年に来日したアフリカ系アメリカ人のコントラルトの歌手、マリアン・アンダーソンが、占領期からポスト占領期にかけて、対日文化政策にどのようなインパクトをもたらしたのかという問題を考察し、人種やその政治性、ジェンダーバイアス、音楽批評と異文化交流といった側面を考慮して、来日の背景と反響、そのレガシーを多角的に調査したものです。このテーマは、日米のトランスナショナルなテーマであると同時に、グローバル市場におけるクラシック音楽の展開という視点でも重要です。研究方法に関しても、同じ資料に対するまったく異なる見解を、複眼的にどのようにまとめていくのか、おのおのの文化的コンテクストに照らし合わせた時にもたらされる新しい視点をどのように記述するのか。その問題を歴史記述のなかで考えていくことが、越境的・対話的音楽文化史の方法であり、それは、再生であり創造である舞台・演奏芸術にも大きなインパクトを持つ方法だと考えています。

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