宇宙の科学と市民科学活動支援システムの構築―越境への挑戦
宇宙科学と広義の科学教育の2つの領域の研究に取組んでいます。
1.人工衛星等による宇宙の観測的研究
ブラックホールなどの強い重力場を伴う天体の近傍や、超新星爆発に伴い形成される衝撃波などではガスの加熱や粒子加速が起こりX線が放射されます。衛星を用いて大気圏外でX線を観測し、これら宇宙の高エネルギー現象の物理や天体の性質を探る分野はX線天文学と呼ばれます。これまでに、「ぎんが」衛星のガンマ線バースト検出器の開発、「あすか」衛星のX線望遠鏡の開発、超新星残骸、彗星等のX線観測などに取組んできました。現在は、地球大気によって反射されたX線の中に、降下宇宙塵の兆候を調べています。また、大阪大学他のグループとともに、それぞれX線望遠鏡と検出器を搭載した2機の小型衛星の編隊飛行により天空領域の高エネルギーX線走査観測を行う計画の検討に参加しています。
この他、月周回衛星「かぐや」に搭載されたα線検出器のチームに参加し、データの解析を進めています。測定するα線は、月面のラドンガスによるもので、ガス放出の場所や時間変化を調べることを目的としています。
2.地域社会における市民科学活動支援システムの構築
現代社会においては、環境問題をはじめとした様々な社会的課題の把握と解決に科学が重要な役割を果たします。その一方、科学が高度化、専門化する中で、市民の科学への関心が低下する傾向が問題となりました。このような背景を踏まえて、地域社会において、市民の科学に関わる様々な活動を大学等が支援し、専門家と市民の対話と協働の場を創成する取組みを進めています。社会貢献としての側面に加えて、取組みの過程とその成果を、社会的システムとその構築のモデルとして実践的研究の対象としています。ヒューマン・コミュニティ創成の理念を掲げる本研究科の多様な研究者との連携のもとでユニークな“神戸モデル”を作ってゆきたいと考えています。
【研究室紹介】 人工衛星による観測データを用いた宇宙の科学
自然環境論コースには、宇宙環境という教育・研究領域が設けられています。人工衛星等を用いた宇宙科学の研究や宇宙利用が活発に展開し、また宇宙の誕生から現在に至る歴史や宇宙の多様な現象について科学的な描像が得られた現代にあって、人間環境のフロンティアとして宇宙に目を向けることは意味のあることだと思います。
私の専門は、X線による宇宙の観測的研究です。宇宙からのX線は大気で吸収されてしまうため、人工衛星からの観測データを用いて宇宙の高エネルギー現象等を研究します。現在は、月探査衛星「かぐや」によって得られた月面放射線データの解析も行っています。
また、宇宙科学とは独立の課題として、科学と社会の関係についての問題意識から、市民の科学に関わる諸活動を大学等が支援するシステムについて実践的研究も行っています。自然科学を学び、その専門性を活かして地域社会と関わってゆこうという方も歓迎します。
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