響きあう身体、越境する音楽 ー 森松慶子、李雅心の視点【学術Weeks2026】

音楽文化史ゼミは、2014年から研究科の学術WEEKSで「音楽文化のトランスボーダー」と題して、ジャンルや文化圏、時代などを越境し、新たな問いを投げかける音楽文化の豊かさと可能性を、実際の舞台上演を通して紹介し、アフタートークでは「歴史の忘却」や「文化的記憶」のありかたを問う機会を設けてきました。
https://researchmap.jp/Misako_Ohta/others

Vol.11となる今回は、音楽文化史分野で提出された博士論文を基に新しい試みに挑戦します。「奏でる」という実践のなかで生まれた問題意識が、学術研究として結実した後に、再び「響き」へと展開して、再創造へと繋がる。音楽文化史では、歴史の多層的な背景のなかで、響きは常に「現在」とも結びついて、「今」を奏でます。本プロジェクトの目的は、音楽文化史の研究が実際の響きと織りなすダイナミクスを、論理的にも練り上げられたこだわりのプログラムを通して、観客に実際に体感してもらい、共有することです。

出演者は森松慶子(電子オルガニスト)と李雅心(メゾソプラノ歌手)。二人は音楽文化史で博士論文を提出したのみならず、充実したキャリアを持つ音楽家です。前半では「響きあう身体」と題してオルガニストでもある森松が研究論文を通して追究してきた問題意識をプログラムに構成して奏でます。楽器の「アイデンティティ」と身体性、「交響的室内楽」などのキーワードから電子オルガンの響きへの新しい視点が解き放たれます。後半では「越境する音楽」と題してメゾソプラノ歌手の李が、多文化が交差する港町、中国の青島で鳴り響いた音楽を、歴史的観点から再解釈し、自らの声で再創造します。共演者には、ピアノの濵﨑香代子を迎えます。(プロフィール、曲目などはフライヤー参照)

森松慶子からのメッセージ
「まるで〇〇そっくり」「一人で弾いているとは思えない」と“褒め”られてしまうことが多い電子オルガン。電子オルガンではない楽器のサウンドに似れば似るほど「リアルだ」と”評価”されることもよくある。そういうところも確かに面白い楽器だが、自分が実現したいのは、そこで一人の奏者が電子オルガンを弾いている以上でも以下でもない、等身大のあり様。それが自分にとっての電子オルガンのリアリティ。そんなことを考えては弾き、弾いては書き、を40年近く繰り返すうちに「身体性」「共感」「ことば」というキーワードたちとの出会いに恵まれた。折しも世はAI大興隆中。電子オルガンのことを考える中で授かったキーワードたちは多分、現代という時代を生身の身体で生きていく上でも何かしら希望や勇気を与えてくれるものではないかと、少し大袈裟なことも考えてしまっている。

李雅心からのメッセージ
異なる言語で歌うたびに、同じ声であっても、その響きはわずかに変化する。西洋歌曲、中国古典歌曲、日本歌曲――音楽は、それぞれ異なる歴史や文化のなかで生まれ、人々の記憶とともに受け継がれてきた。しかし、音楽は単に国境を越えて移動するのではなく、新たな土地や時代のなかで受容され、再解釈されながら、その土地固有の文化や響きを形づくってゆく。多文化が交差する港町・青島に育った経験は、私にとって音楽の越境性を考える原点となった。青島の音楽文化史研究を通して、音楽はたんに移動するだけではなく、人々の記憶や経験と結びつきながら、新たな文化や響きを生み出していくことを学んだ。演奏と研究のあいだを往還しながら、音楽がどのように時間や境界を越え、人々を結び、新たな意味を獲得していくのかを探り続けている。

日時

2026年10月19日 (月) 18時~20時

場所

神戸大学 鶴甲第二キャンパス C111(C棟ホール)

出演

森松慶子 (電子オルガン、作・編曲)
李雅心 (メゾソプラノ、音楽学)
濱崎香代子 (ピアノ)

参加方法

予約不要、無料

企画・お問い合わせ先

表現系講座 音楽文化史研究室
大田美佐子 Mail:misaohta [at] kobe-u [dot] ac [dot] jp

主催

神戸大学大学院人間発達環境学研究科 学術Weeks2026

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