「シンポジウム:インドとイランの打弦楽器を比較する―サントゥールを事例に―」が開催されました。本研究科 谷正人准教授による報告記事

 

打弦楽器とは、台形の共鳴胴の上に張り巡らされた多数の弦を撥で打つ楽器である。本シンポジウムでは、インド・ムンバイを中心に活躍するインドサントゥール演奏者新井孝弘と、本研究科のイラン音楽研究者およびイランサントゥール演奏者の谷正人を中心として、インドとイランのサントゥールの類似性と差異性を民族音楽学的観点から探る試みが行われた(司会:M2生 宮本夏実)。「民族音楽演奏特別演習」「エスノミュージコロジー1」受講生をはじめ、学外からイラン研究者や音楽研究者など70名超の聴衆が参加した。

まずデモ演奏として、イラン音楽にはYazdanmehr Razi (イランパーカッション:トンバク)、インド音楽には藤澤ばやん (インドパーカッション:タブラ)が参加し、それぞれ30分程度の演奏を行った。

後半では、打弦であることとその楽器構造ゆえの、声を模倣する上でのディスアドバンテージと、そうした立場を克服するための関係者の試行錯誤などが報告・議論された。また質疑応答では調律システムの問題やその改善をめぐる両文化の試みや差異、などが議論された。

両文化は、人間の声をいかに模倣するかという共通した課題を抱えている。しかし議論から明らかになったのは、早い段階でイランサントゥールがそれをある意味「諦め」て器楽志向にシフトしたことで演奏者人口を爆発的に増やしたのに対して、インドサントゥールは、声の模倣に真摯に向き合いながらも、それによって演奏者人口を大きく増やすのには至らなかったという点である。両文化が同じ課題を抱えつつ異なった帰結を迎えたのは大変興味深いといえよう。

参加者からのフィードバックでは、「全てについて、「歌」を基本にしておられることがよく分かりました。が、共通点もありながらなんと出てくる音楽の違うことか。。。」 「インドでのサントゥールの変化の件、新井氏の恩師の改革について(谷正人氏の)著書にも書かれていました。改革前の状態の音楽を聴いてみたい(できれば見てみたい)です。」などの意見がみられた。

 

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イベントの様子
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