学術weeks2025 音楽文化のトランスボーダーvol.10 は、服部吉次さんと黒田京子さんによる『剃刀横丁のオペラ』 を再演した。12月15日に行われた公演は、1時間の上演と30分のアフタートークで構成された。音楽文化のトランスボーダー Vol.10 『剃刀横丁のオペラ』ーひとり芝居の可能性を探る【学術Weeks2025】
本公演は、2014年に両国のもんてんホールで上演され、同年の11月に神戸大学で上演された服部吉次さんと黒田京子さんの『剃刀横丁のオペラ』に遡り、今回は11年の時を経て再演されたことになる。オペラの世界では、リヒャルト・ワーグナーの楽劇をひとり語りで演じる喜劇俳優や、日本でもマルセ太郎のように映画を一本ひとりで語る例もある。服部さんの語る三文オペラは歌も重要であり、複数の人物を物語る江戸前の落語と、歌を語りで繋ぐドイツのカバレットのような味わいを併せ持つ。その「ひとり語り三文オペラ」のオリジナリティとアクチュアリティに感銘を受けた学生も多かった。記録写真でも、服部さんがその微妙な表情や身体の使い方の違いだけで、老若男女の役柄を演じ分けていることがわかる。人間の業が滲み出た、それぞれの登場人物の表情も豊かに表現された。
また、81歳にして内なるビートが感じられる軽い身のこなし。日本語を歌いながら、ヴァイルの音楽にびたっと嵌る卓越した語り。服部さんの語りと歌はシームレスにすべて音楽的で、言葉の意味もしっかり響く。そこに、ヴァイルの音楽に寄り添いつつ即興的な遊びあふれる黒田さんの音楽が、絶妙に生き生きと絡んで戯れた。
アフタートークでは、服部さんの発言「下手だって悪者だって、ブレヒトの告発に応えるためには、堂々と歌うってことが大切なんです」を印象深いと例に挙げた学生が多かった。まさに、弱きものや暗闇にいる者に「声を与える」ことが、登場する一人一人が自分の声で歌うブレヒトとヴァイルのオペラであったことを想起させた。黒田さんは、一見、キャッチーに聞こえるヴァイルの音楽のハーモニーの複雑さについて語った。アンコールとして、ブレヒトの「死んだ兵士の伝説」(長谷川四郎)が歌われた。(文責: 大田美佐子)
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- 大田 美佐子(教員情報)