インクルーシヴ社会支援部門

 インクルーシヴ社会支援部門は,社会的排除のない共生社会とはどのようなものなのか,また,そのような共生社会に少しずつ近づくためにはどのような実践が必要なのか,という課題に取り組んでいます。

1.「のびやかスペースあーち」の運営と実践的研究

 ヒューマン・コミュニティ創成研究センターのサテライト施設である「のびやかスペースあーち」(以下「あーち」)は,神戸市と神戸大学との連携協定に基づき,灘区民ホールの3階に設置されています。インクルーシヴ社会支援部門は,「あーち」の運営を主幹するとともに,「あーち」における実践的研究を実施しています。

〈よる・あーち〉
 学習支援,子ども食堂,居場所づくりなどを並行して実施する複合プログラムで,毎週1回,夕方から夜にかけて実施しています。多様な年齢や属性の人たちが60名~80名ほど集まり,相互に学び合う場を形成しています。

〈あーち学習支援〉
 神戸市の委託を受け,毎週1回,「よる・あーち」プログラムの一環として実施しています。学習面,社会性の面で課題をもつ児童・生徒・青年が毎回20名前後参加しています。支援者は学生を中心に構成され,学習支援を契機とした支援者の学びに焦点を置いた取り組みを行っています。地域住民や保護者も支援に加わり,参加型研究のフィールドにもなっています。

〈あーち子ども食堂〉
 神戸市の委託を受け,灘区連合婦人会と連携して実施している事業で,毎週1回,「よる・あーち」プログラムの一環として実施しています。兵庫こども食堂ネットワークに加盟し,その運営への協力も行っています。

〈あーち居場所づくり〉
 毎週1回,「よる・あーち」プログラムの一環として実施している多様な人びとの間の関わりを促進する実践です。障害のある子どもの十分な参加をテーマとして活動を構成し,さまざまな年齢や属性の人たちが遊びや会話を通してエンパワーしています。「都市型中間施設」概念に基づくモデル開発実践プログラムとしても位置づけています。

〈あーち博物館〉
 地域文化を創造していく拠点として,博物館の手法のおもしろさを取り入れることをめざして実施しているプログラムであり,国際人間科学部,発達科学部,国際文化学部,人間発達環境学研究科,国際文化学研究科の博物館学芸員課程の学内実習として実施しています。

〈ドロップイン・サービス〉(子ども家庭支援部門からの引き継ぎ)
 地域子育て支援拠点事業を神戸市との連携によって引き続き実施しました。乳幼児とその保護者が安心して社会的なつながりや活動に関わることができ,また必要に応じて子育てに関する相談をすることができる場です。週5日6時間解説している。「あーち」において利用者の最も多い活動で,さまざまなプログラムの拠点としても機能しています。

〈子育て相談事業〉(子ども家庭支援部門からの引き継ぎ)
 助産師・保育士の資格を持つ相談員を配置し,保護者からの相談に応じました。また,専門のNPOからも子育て相談に応じることのできるボランティアの派遣を受けました。その他,灘区歯科医師会との連携相談事業(隔月)も行いました。相談内容の多くは,子どもの生活に関すること,発育・発達に関すること,離乳食・幼児食に関すること,育児不安,地域資源に関する相談でした。

〈ペアレンティング・セミナー〉〈赤ちゃんふれあい体験学習〉(子ども家庭支援部門からの引き継ぎ)
 ほぼ毎月1回土曜日に開催している神戸市との連携プログラムです。乳児を育てる保護者どうしの交流並びに子育てに関する学習機会を提供しています。また同時に,児童・生徒とのふれあいが乳児とふれあう体験の機会を提供しています。

〈地域子育て応援プラザ灘・灘区公立保育所との協働実践〉(子ども家庭支援部門からの引き継ぎ)
 灘区内の公立の子育て支援関係施設と連携し,保育士の「あーち」への派遣事業(見守り,相談,親子遊びの実施),公立・私立保育所の保育士向け研修会,広報活動を行いました。

〈ビギナーズ交流会〉(子ども家庭支援部門からの引き継ぎ)
 「あーち」を初めて利用する母親を対象としたコネクション・プログラムで,毎月1回実施しています。生後6ヶ月未満の乳児とその母親が毎回10組程度参加し,特に母親のエンパワメントに焦点を当てた取り組みを行っています。

2.知的障害者と社会資源としての大学

 知の世界から最も排除されている知的障害を参照枠組として,社会資源としての大学がもつ人の成長・発達を促す学びを提供する機能を向上させる実践に取り組んでいます。

〈カフェ「アゴラ」〉
 人間発達環境学研究科内に設置された交流スペースであるカフェ「アゴラ」において,知的障害者がサービス提供者として働くモデルを開発することによって,障害者と学生や教職員との対話を通した相互学習機会の創出をめざしています。

〈セルフアドボカシー支援〉
 知的障害者の自己権利擁護の一環として新聞づくりの支援を行っています。知的障害者の人となりや日々の生活のありようなどを,社会一般に知ってもらうために,知的障害者自身が編集・執筆している媒体の制作を支援しています。

3.海外との連携

 障害を社会的排除の問題として捉えようとする世界的動向と呼応して,韓国ナザレ大学,ソウル私立知的障碍人福祉館や米国ミネソタ州のセルフアドボカシーグループなどと連携しつつ,障害の問題に取り組む新しい実践的研究の分野や方法を模索しています。特に高等教育機関への障害学生の受け入れや,障害者の表現活動について,実践的な研究を行っています。


スタッフ

リーダー
津田 英二 (専任研究員・教授 人間発達環境学研究科 人間発達専攻 学び系講座)
学内部門研究員
白杉 直子 (人間発達環境学研究科 人間環境学専攻 環境形成論講座 生活環境論)
岸本 吉弘 (人間発達環境学研究科 人間発達専攻 表現系講座)
赤木 和重 (人間発達環境学研究科 人間発達専攻 こころ系講座)
吉田 圭吾 (人間発達環境学研究科 人間発達専攻 こころ系講座)
鳥居 深雪 (人間発達環境学研究科 人間発達専攻 こころ系講座)