教員情報(梅宮 弘光)

氏名・職名 梅宮 弘光(うめみや ひろみつ,Hiromitsu Umemiya)教授
メールアドレス umemiya [at] kobe-u [dot] ac [dot] jp
学位 博士(学術)(神戸大学)
研究分野 近代建築史
[学部] 担当 国際人間科学部 » 発達コミュニティ学科 » アートコミュニケーションプログラム
[大学院] 担当 人間発達環境学研究科 » 人間発達専攻 » 表現系, 表現文化
研究者情報 神戸大学研究者紹介(KUID)
教員サイト http://www2.kobe-u.ac.jp/~umemiya/
研究紹介

忘れられたものから建築と都市を読み直す

「表現文化論分野」は、人間と世界の相互関係を、表現や象徴を切り口に探求しているところです。そのなかで私は、空間的な拡がりをもった世界、とくに「建築」や「都市」を対象に、その意味を近代という時代と社会の脈絡の中で探ろうとしてきました。とくに関心をもって取り組んできたのは、頓挫した計画、挫折した人生、忘れられた存在……。とにかく少々残念な結果に終わったものに、私はみょうに惹かれるのです。そこに、世界に対峙したときの人間の真実を垣間見るように思うからです。たとえば建築の場合だと、日本のモダニズム。その最尖鋭たるアヴァンギャルドたちの活動です。彼らは既存の安定した技術や表現を否定し、夢想的なユートピアを描くのですが、うまくいきません。現実を踏まえていないのだから当然です。それならと現実的な活動にシフトするのですが、歴史はそれを評価しません。今度は凡庸に過ぎるのです。たとえば都市の場合だと、戦災復興期。戦後の焼け野原にいち早く展開したのは、ヤミ市や不法占拠といった違法性と無計画を含みながら絶妙の間合で権力に対応した民衆的活動でした。そうした環境形成が復興の序を開くわけですが、世の中の安定につれて強大な計画性のなかに回収されていきました。このように、かつて一瞬の輝きを放ちながら、確かな足跡を残さないまま消えていったものを、歴史は必ずしもていねいに見つめようとはしません。とくに、近代や戦後の比較的新しい事柄については、その意義や重要性に気づくのが遅れがちです。ようやく気づいたときには建物は取り壊され、当事者は亡くなり、資料は散逸。自分の見識のなさが恨めしいですが、一方、歴史研究はここからがほんとうのスタートだとも思います。ささやかな情報をたぐり寄せ、細部や暗部がその姿を現し始めたとき、歴史の全体もまた、これまでとは異なる光景として立ち現れる。それを確かめたいと念じています。

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