神戸大学大学院人間発達環境学研究科 大学院生の研究活動2021

[前期課程]

 

本当に必要な人に支援を届けるために

出口 美咲(人間発達専攻 心理系(臨床心理学コース) 前期課程2年)
研究分野:臨床心理学

私は将来,心理職として人々の支援ができたらと思い,臨床心理学コースで学んでいます。その中で考えたのは,支援者の技術向上はもちろんのこと,そもそも支援の機会を作るには人々が相談に来てくれることも重要で,それを促すにはどうすべきか考える必要があるのではないかということです。困った時,誰かに相談し助けを求めること,すなわち援助要請をすることは生きていく上で不可欠と思われますが,中には相談しようとしない・できない人もいます。悩みや症状が深刻な人ほどその傾向が強いとも言われます。こうした人々がなぜ援助要請を避けてしまうのかを明らかにすることで,本当に必要な人に支援を届けやすくなるのではないかと思い,研究を進めています。


音楽教員の即興演奏能力向上を目指す

大森 響介(人間発達専攻 表現系 前期課程2年)
研究分野:音楽教育,即興演奏

私は音楽教員の即興演奏能力育成方法について研究しています。即興は,創作(音楽づくり)の授業のみでなく,歌唱や器楽での伴奏時などの音楽の授業のあらゆる場面で音楽教員に求められる能力です。しかし,これまでの音楽教員養成課程では正確な読譜や楽譜の忠実な再現ばかりが重視され,即興はあまり扱われてこなかった歴史があります。また,それによる音楽教員の即興の苦手意識や経験不足も指摘されています。音楽教員が即興演奏を苦手としている要因を明らかにし,音楽教員に求められる即興演奏能力とはどのようなものか,そしてどのようなテキストやプログラムを用いた実践を行えば即興演奏能力が身につくかについて研究しています。将来はその場の瞬間に奏でる音楽の楽しさを伝えられる魅力的な音楽教員を目指しています。


「笑い」を通して人々を健康に

関山 紗英(人間発達専攻 行動系 前期課程2年)
研究分野:社会心理学,老年学

私の研究テーマは「笑い」です。どのような要因が高齢者の笑いを促進するのかについて明らかにし,高齢社会における健康寿命の延伸に役立てたいと考えています。そのために,高齢者施設においてフィールドワーク調査を行い,入居者の笑いや会話の内容,心理的な特徴といったデータの分析を行います。このような研究は日本ではあまり行われておらず,一筋縄に行かないことも多々あります。しかしその度に,専門分野の内外に問わず,多角的な視点から知見を得られる本研究科の環境に助けられ,刺激的で楽しい研究生活を送ることができています。将来は,「高齢者」や「老いること」に対する世の中のイメージをよりポジティブにできるような仕事がしたいと考えています。


大阪における子どもの貧困の歴史的研究

肥後 綾華(人間発達専攻 教育系 前期課程2年)
研究分野:教育学

私は,子どもの貧困問題の歴史について,明治期の石井十次の取り組みに注目して研究しています。子どもの貧困は,近年になってようやく取り上げられるようになりました。しかし,これは新しい問題ではなく,日本が近代化し資本主義社会に参入したころから続くものです。特に大阪では農村から多くの人が流入し,都市下層民として生活することになりました。そのような人々の子どもたちに教育を施し,日本の未来を切り開こうとした石井十次の精神は,その後の社会福祉・児童福祉に多大な影響を与えています。過去と現在では社会的な状況が大きく異なりますが,厳しい状況を変えた先人の教えが今の教育にも生きると考え,今後も研究を続けていくつもりです。


コンピュータに数学をさせてみよう

大島谷 遼(人間環境学専攻 環境基礎科学系 前期課程2年)
研究分野:数式処理

私は,数式処理という分野を専攻しています。数式処理とは,コンピュータを用いて方程式の因数分解やその他の代数計算を効率的に行うことを目的にした分野です。特に,グレブナー基底という数学的に重要な理論のアルゴリズムを研究しています。またグレブナー基底は主にコンピュータで計算されるため,コンピュータの性質を理解してアルゴリズムを設計する必要があります。これまでは主に紙とペンで行っていた数学を,コンピュータを交えて行うことに面白さを感じています。これらは将来活かせる経験だと思いますし,現在も興味の赴くままに研究をすることができて楽しいです。


衣生活の可能性を広げる

張 皓(人間環境学専攻 環境形成科学系 前期課程2年)
研究分野:衣環境学

人間の触覚は複雑です。繊維製品や他の材料を触る時,認知だけでは無く,感性的にも影響を受けます。より快適な繊維製品を作るため,客観的な評価指標が必要です。今までの繊維製品の評価は主に物理評価と官能評価でしたが,私は神経生理学的視点から,脳波を用いて新しい評価指標を作ることを目指して研究を行っています。昨年はコロナ禍の中で,1ヶ月のオンラインインターンシップに参加し,ダイキン工業株式会社で,「執務空間の温度と気流がマスク着用時の快適感と作業効率に及ぼす影響」について研究するという体験をしました。生活に密着した様々な未来の課題に対応するため,各分野の融合をはかりながら学際的な研究ができる専攻であると思います。


[後期課程]

 

実践的な研究から理論的な研究へ

瀬川 千裕(人間発達専攻 教育系 後期課程2年)
研究分野:教育方法学

私は,3年間,公立小学校に勤務していました。教員として勤務する傍ら,2つの民間教育研究団体に所属し,実践的な研究を積み重ねてきました。1つは教育目標・評価について研究する団体,もう1つは「書くこと」の教育について研究する団体です。私は,実践的な研究に取り組むなかで,理論的な研究の必要を感じるようになりました。なぜなら,実践を深めたり価値づけたりする枠組みが十分ではないからです。教員としての経験や民間教育研究団体における活動を踏まえて,大学院では生活綴方の研究をしています。生活綴方とは,文章表現指導をつうじて子どもの認識と表現の力を育てる教育方法です。私は,生活綴方の歴史に関する研究を通して,実践をとらえる枠組みを提示することを目指しています。


今の景観を後世に残すために

矢井田 友暉(人間環境学専攻 環境基礎科学系 後期課程2年)
研究分野:群集生態学

私の研究領域は植物の群集・保全生態学です。絶滅の危機に瀕している植物種が,現在どのような環境に残っているのか,これからどう保全していけばよいのかについて研究をしています。花が咲き始める頃に紙とペンを持ち草原へ駆け出しては,研究室に戻ってデータの解析をし,植物の多様性と環境との関係を見つけ出していきます。生物多様性の減少は現代社会が抱える問題のひとつです。今我々が見ている多様性に溢れる景観を後世まで繋いでいくため,人間活動により時事刻々と変化していく生育環境をモニタリングし,植物の多様性を維持しているメカニズムを解き明かすことを目的に日々研究に励んでいます。


※ 所属は,対応する教育組織改変後の教育研究分野を記載しています。

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案内パンフレット 『神戸大学大学院人間発達環境学研究科2022』 より