教員情報(OHTA Misako)

氏名・職名 大田 美佐子(おおた みさこ,OHTA Misako)准教授
メールアドレス misaohta [at] kobe-u.ac.jp
取得学位 Ph.D. (University of Vienna)
研究分野 音楽文化史,音楽美学
[学部] 所属 人間表現学科 表現文化論コース, 人間表現論コース
研究テーマ

両大戦間の音楽文化の諸相 (音楽・音楽劇における伝統の継承とその展開,受容の問題) について研究しています。

[大学院] 所属 [博士課程前期課程] 人間発達専攻 表現系講座
[博士課程後期課程] 人間発達専攻 表現系講座
[(旧)博士課程前期課程] 人間表現専攻 表現文化論コース
[(旧)博士課程後期課程] 人間表現専攻 表現文化論分野
研究テーマ

両大戦間の音楽劇を中心に,文学や美術などの諸芸術,社会やメディアとの関わりなど,様々な背景から「音楽表現や音楽文化の歴史」を研究しています。

研究者情報 神戸大学研究者紹介(KUID)
教員サイト
研究室紹介 自分の歴史意識を見つめ直し,新たなコンテクストから音楽表現を捉え直す

現代はリアルなコミュニケーションが希薄な時代といわれています。古今東西,音楽は人々の交流の場を生み出してきましたが,なかでも近現代のヨーロッパの都市で,舞台芸術は貴重な対話の機会を提供してきました。演者のみならず聴衆も地域の舞台の発展に関心をもち,作品や演奏家や演出を論評しあうことで文化を育ててきたともいえます。そのような舞台芸術の研究に必要なものは何でしょうか。楽譜や台本は基本的な資料ですが,公演で変更されることもあり,完結したものではありません。舞台芸術の研究では,自分自身を歴史の流れに含めたうえで,歴史意識,時間意識をもって舞台の現場にじっくり向き合うことが重要です。「学問とは日々を自覚的に生きることに他ならない」とは,西洋中世史の碩学阿部謹也氏の言葉ですが,このゼミでは演奏会や舞台鑑賞を重要な「フィールドワーク」と位置づけ,文献講読だけではなく「生きた歴史に触れながら考える」をモットーに研究を進めていきます。

研究最前線 「聴くこと」の大切さ― 耳を傾けて, 歴史とつながる

「音楽は見えない」。音は「見えない」けれど,何世紀も前の音楽から私たちはメッセージを受け取り,その時代の思考を聴き,時代の空気を感じとっています。音楽学という学問の根底に,目に見えないもの,時とともに移ろいゆくものに耳を傾け,それを言葉で伝えるというシンプルな使命を感じています。
現在は,卒業論文から20年以上つきあってきたクルト・ヴァイルという作曲家に改めて向き合い,彼の音楽と社会との関わりをまとめています。舞台芸術もグローバルな時代を迎え,さまざまな解釈が,過去の歴史から現代の問題意識を照射しています。2011年秋にボッフム,ミュンヘン,ケルンの三都市で観た,演出コンセプトが異なる三つの《三文オペラ》は,まさにヴァイルとブレヒトによるひとつの作品から開かれる無限の世界を示していました。混迷を深める現代に,語りつくされることのない懐の深さを示した,この作品の謎めいた魅力を伝えたいと思います。
ふたつめのテーマは,第二次世界大戦までのキャバレーと音楽家たちについての研究です。キャバレーはドイツ語で「Kleinkunst(小さな芸術の意,転じて演芸)」に分類されますが,その芸術が孕む精神性には深みがあります。キャバレーの音楽に特有の,表向きの軽妙さとは裏腹の毒のある風刺や鋭い観察眼は,音楽の表現がもつ新たな可能性を示唆しています。作品という枠組みを中心とした,これまでの音楽史記述のあり方自体を違う角度から問う作業になると思います。
「3.11」後に創刊された音楽雑誌や「アートと戦争」をテーマに開かれたシンポジウムでも,「大災害や戦争など社会が危機的な状況に陥ったときこそ,表現の真価が問われる」という指摘がありました。それは,とりもなおさず「耳を傾ける」側にも,音楽と向き合う真摯さが求められていることだと思いました。オリジナルの根底にある問題性と,現代に照射される問題意識の温度差,その歴史の多層性とメッセージを読み解き,音楽の「リアル」な本質を伝えていきたいと思っています。