第7回日仏ライフヒストリー研究国際シンポジウム -人生の決定的瞬間を描く!カイロス時間-

語ることを方法とするライフヒストリー(ライフストーリー)に,心理学,教育学,社会学,人類学等,さまざまな方面からの関心が集まっています。今回は,カナダ・ケベック大学からダニエル・デマレ(Danielle Desmarais)教授とパスカル・ガルバーニ(Pascal Galvani)教授を招いて,キャリア教育・学生支援の立場から,実践=研究方法としてのライフヒストリーについて議論します。内観療法・記憶と語りにかかわってどのような交流が生まれるかご期待ください。

日時
2016年2月27日(土) - 28日(日)
場所
神戸大学発達科学部 大会議室
日程
2月27日(土)
  • 13:30 趣旨説明 末本誠 森岡正芳
  • 13:45 基調報告1
     ダニエル・デマレ教授『伝記的な展開による,どのような時間性?―超現代の成人教育』(フランス語通訳有)
  • 15:15 休憩
  • 15:30 発題1
     「人生を想起するということー内観療法」 真栄城輝明
  • 16:30 引き続き 討議
  • 17:50 終了
2月28日(日)
  • 10:00 基調報告2
     パスカル・ガルヴァーニ教授『ライフストーリーと自己教育-年代記的時間とカイロス的時間のあいだ』(英語通訳有)
  • 11:30 休憩
  • 11:45 発題2
     「内的生活史と語り」 野村晴夫
  • 12:45 昼食
  • 13:45 総括討議
  • 15:00 まとめ 末本・森岡
  • 15:15 終了
主催
神戸大学大学院人間発達環境学研究科
お問合せ先
神戸大学大学院人間発達環境学研究科人間発達専攻 森岡 正芳

報告



当日の様子

今回のテーマは時間・記憶・語りである。
今回のシンポジウムでは,ガストン・ピノーが創始した自己教育の実践のその後の展開が具体的詳細にわたって提示された。デマレより,小集団による自伝構成の実践について,グループの枠組み,作業のステップの紹介があった。「人は現在を生きるために,過去と未来を必要とする」(Marc Augé)。自己が自らの歴史の当事者主体になっていくこと,自己が再構成される。このプロセスが浮かび上がる。これをデマレは「時間の再結合」と呼んだ。
デマレは,個人そして自己主体(アイデンティティ)の危機という現代人の深刻な課題から自らの実践をふりかえる。時間の再結合がどのように行われるのか,そこに介在する「伴走者」としての他者の役割が議論された。
日本側からは真栄城輝明 佛教大学教授より,「人生を想起するということ-内観療法」 の講演があり,内観の創始者吉本伊信より受け継がれた内観道場での場面が,詳細に紹介された。人の苦悩がどうして生まれるのか。たとえば恨みという感情が,その人の人生を支配する。内観は面接が主ではない。語らなくてよい。自分を「調べる」そのあなたを尊重する。語りの実践に関わる文化歴史の違いに関わる興味深い議論が展開された。内観された身近な肉親の姿を思い起こし,語ること。なぜそしてどのように人は,自分の過去を語るのかについて,「語ることで出来事を歴史化していく行為」を総合的に議論した。
28日のパスカル・ガルヴァーニ講演「ライフヒストリーと自己教育-年代記的時間とカイロス時間」において,時間の再結合という課題がより深く議論された。グループの参加者は頻繁に,意味のある決定的な瞬間の細部を引き合いに出すということが発見された。この瞬間をガルヴァーニは「カイロス的瞬間」呼ぶ。強烈で重要な瞬間が果たす自己教育過程の中での役割について,“行為の明示化”(expliciataion)と呼ばれる現象学的な手法を用いて分析を行っている。続いて“自己教育のカイロス”を探求するワークショップグループ”の実際について議論した。
その後,大阪大学 野村晴夫准教授による「内的生活史と語り」という話題提供は,心理臨床場面の出来事の語りにパターンに注目し,精緻な分析を行った研究発表が行われた。総括討議では,内的生活史と記憶,個人の家族史の記憶,過去についての世代継承的集合記憶についての議論が交わされた。語りの今プレゼントモメント,文化的背景から出来事の意味の語り,想起とライフヒストリーの課題など,これまでの「臨床ナラティヴアプローチ」とテーマ,内容,問題意識と交差する領域をさらに開発していきたい。

本シンポジウムは,平成27年度科学研究費補助金 基盤研究(A)「生活史法による臨床物語論の構築と公共化」による助成を受けて行われた。

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