研究道場特別講義 報告

「科学教育開発基礎論研究の最前線~私が開発途上国における科学教育を研究するわけ~」報告

講師
清水 欽也(広島大学大学院国際協力研究科教授)
日時
平成26年5月21日(水)17:00~18:30
会場
発達科学部 A427(A棟4階)
報告
本講義では,ルワンダやカンボジアの学校現場における実践事例をもとに,発展途上国における科学教育に携わる教員支援の内実が扱われた。その中で発展途上国における科学教育に関する課題と支援の方向性を以下のように認識できた。(1)解法を暗記するだけといった試験のための教育が行われており,子どもはデータや証拠に基づいて自分の考えを展開することに弱みがある。その克服のために発問の質の改善や探求型授業の導入といった支援を教員に実施していくことが重要である。(2)教師自身の学力不足や子どもに関する認識不足が教育現場の悪循環を招いている。この課題解決のために,プロセススキルに関する研究を支援し,学習方略に関する教師の力量を向上させることが重要である。
筆者は今年度の9月より,フランスの国際学校において科学教育に関するアクションリサーチ研究に取り組む予定である。本講演を通して,対象校の教師が抱える課題を把握する重要性について再認識するとともに,現地校のカリキュラム分析や教員のプロセススキル分析に関する新たな知見を得ることができた。(人間発達専攻 M1 大黒仁裕)

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「ArCairoのつくりかた」報告

講師
いいむろなおき(マイム俳優・演出家・振付家/「いいむろなおきマイムカンパニー」主宰)
長谷川寧(作家・演出家・振付家・パフォーマー/「冨士山アネット」主宰)
日時
平成26年5月26日(月)19:30~21:00
会場
身体スタジオ F164-1(F棟1階)
報告
ArCairo(アルカイロ)は,「見たことのないマイム」の制作を試みている。マイムは既存の経験の再現をもとに成立し,演者は「どう見せるか(主観的マイム)」と「どう見えているか(客観的マイム)」に注意を払いつつ,その解釈を鑑賞者の想像性に委ねている。マイムは,18世紀末~19世紀のフランスにおける言葉を用いた劇に対する抑圧の中で,カウンターカルチャーとして発展を遂げてきた。ArCairoは,言葉を使うことなくドラマ性を表現することで発展してきたマイムから,あえてストーリーを取り払い,その上でマイムをパフォーマンスとして成立させようと試みている。クリエイティビティ(創造性)が求められている身体パフォーマンスの世界で,新たな光を投じようと試みるArCairoの講義は,筆者自身のダンスに対する姿勢,また研究に対する姿勢を考え直す機会となった。(人間発達専攻 M2 萩原大河)

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「自治体における発達支援のためのシステムづくり―生まれてから大人になるまで一貫した取り組みを目指して―」報告

講師
中村 順子(草津市発達支援センター前所長)
日時
平成26年7月10日(木)10:40~12:10
会場
発達科学部 B202教室(B棟2階)
報告
本講演では,滋賀県草津市の発達支援センターでの取り組みを中心に,自治体における発達支援に向けたシステムづくりについて報告された。発達支援センターは,乳幼児期から成人期のライフサイクルに応じて,障害のある人や疑いのある人への健診や療育といった支援を行う地域での発達支援の拠点であり,さらには彼・彼女らの保護者への支援の機能も有している。報告者からは,子どもや保護者に向けた支援の内実について,具体例を出しつつ,発達的な観点での子ども理解や,保護者の子育てに関する思いや悩みに寄り添うことの重要性を語って頂いた。また発達支援センターでの取り組みにおいては,地域への支援として,幼稚園・保育所や諸学校への巡回・訪問相談及び,子どもの就学先決定の際の情報提供が行われている。そして複数の専門機関の連携の根底には,県と市町村支え合う関係が築かれていることや,1970年代から進められた県下の療育システムの確立があった。このシステムは,保護者や施設職員の粘り強い行政への働きかけから誕生し,子どもの発達を高めようとした人々の共同から生まれた。こうした歴史を有する草津市での発達支援は,子どもを軸にした様々な実践と制度の下支えのもとで成り立っているということを学ぶことができた。(人間発達専攻 D1 金丸彰寿)

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「南部町教育の挑戦~「地域共同学校(コミュニティ・スクール)」を核とした地域とともに歩む学校教育の推進~」報告

講師
福田 範史(鳥取県西伯郡 南部町教育委員会事務局 総務・学校教育課課長)
日時
平成26年7月17日(木)10:40~12:10
会場
発達科学部 B202教室(B棟2階)
報告
本講演では,南部町のコミュニティ・スクールの取り組みを中心に,地域における学校教育改革について報告された。コミュニティ・スクールとは,保護者や地域の住民が学校運営に参画する学校運営協議会が置かれた学校であり,学校全体の教育活動に地域が参与するシステムである。このシステムは,子ども達の生活リズムの乱れやコミュニケーション能力の不足といった問題の解決を,地域の人々との協同により図るために設けられた。加えて南部町においては,子どもは本来,「地域の子」であるととらえているため,地域と学校との連携の重要性を強く認識している。それゆえ地域の人々のなすべきことと学校教育の果たす役割を明確にしつつ,両者が子どもの育ちに対して共に援助している。また地域の人々が学校運営に参加することで,教師が学校での職務に専念でき,地域に信頼される学校づくりに寄与し,ひいては学校の質の向上につながる。さらに学校を中心にして地域の人々が交わることで,地域住民同士の交流の場として機能し,地域としてのまとまりを深める。すなわちコミュニティ・スクールは,子どもの豊かな発達を援助する実践を生み出す学校を支え,かつ地域の活性化を促進する土壌を育む制度として成り立つのである。(人間発達専攻 D1 金丸彰寿)

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「21世紀型スキルプロジェクトの詳細と未来」報告

講師
益川 弘如(静岡大学大学院教育学研究科准教授)
日時
平成26年7月17日(木)10:40~12:10
会場
発達科学部 A427教室(A棟4階)
報告
本講義では,トロント大学実験校における教師と児童間の関係を分析した結果や協調問題解決テスト(PISA2015)の正答例をもとに21世紀型スキルを育成するための授業設計方法と評価方法が示された。具体的には,以下のように認識できた。(1)学習目標に向かって学習者全員が同じ学習経路をたどっていく「後ろ向きアプローチ」ではなく,学習者が学びを深めていく中で学習者自身が目標を変えていくことができる「前向きアプローチ」を授業設計にとりいれる。(2)総括的評価ではなく,学習を行いながら同時に評価を行う学習状況に埋め込まれた変容的な評価を行う。
筆者は今年度の9月より,フランスの国際学校において科学教育に関するアクションリサーチ研究に取り組む予定である。本講演を通して,子ども一人ひとりが多様な学び方をすることを再認識できたとともに,授業設計方法や評価方法に関する新たな知見を得ることができた。(人間発達専攻 M1 大黒仁裕)

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「空間認識の発達と教育―見取図描画を中心に―」報告

講師
渡邉 伸樹 (関西学院大学教育学部教授)
日時
平成26年7月18日(金)17:00~18:30
会場
発達科学部 A323教室(A棟3階)
報告
教育現場の現状として,教師が数学の系統はわかっていても子どもの認識はわかっていないという場合があるが,教師は数学の系統をベースとした子どもの認識を理解することが重要なのである。本セミナーでは,数学の系統をベースとした子どもの認識を理解するとは一体どういうことなのかを子どもの見取図描画を中心にご講義いただいた。
子どもの見取図描画はどのように発達していくのだろうか.立方体の見取図描画には小学校1~6年生の間に4つの段階があるようだ。受講生は,この4つの段階それぞれの特徴を知った上でそれぞれの特徴を手がかりに,実際に子どもが描いた絵を見て,その子どもがどの段階に位置するのかを推測するという活動を行った。さらに,子どもたちが立方体をどのように捉えているかを調査した結果から,子どもたちが立方体の見取図を正しく描けるということと,立方体を正しく見ることができるということは違うということを知った。子どもの描く際の認識と見る際の認識は違うのである。
このような子どもの見取図描画の分析を通して,教師が子どもの認識段階を理解していないと子どもにダブルスタンダードを持たせてしまう恐れさえあるということを学んだ.そうならないためには,やはり教師が子どもの認識に見合った教育をする必要がある.そしてこのことは数学に限らず,教師はそれぞれの教科の系統をベースとして子どもの認識を理解することが重要なのである。(人間発達専攻 M2 中橋 葵)

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「現代の中学校における生活指導実践 ―子どもと教師が育つ学校とは―」報告

講師
恩庄 澄 (京都府公立中学校教諭)
日時
平成26年7月23日(金)15:10~16:40
会場
発達科学部 B202(B棟2階)
報告
現代の中学校における生活指導実践についてご講義いただいた。受講生からは,中学校の現場で,子どもたちと正面から向き合って指導する先生のお話を聞けてよかった,自分の出身校の様子とは違って驚いた,荒れた学校にいたことがあるのでどのように指導するべきなのか考えながら聞くことができた,などの感想が出された。若手の先生が同行して下さり,短時間ではあったが学生の前で話をして頂いた。これも好評であった。ゲストスピーカーの先生方には,聴講した学生・院生の感想をお送りした。(人間発達専攻 M1 佐川てるは)

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「現代における生活指導の実践と理論構築」報告

講師
恩庄 澄 (京都府公立中学校教諭)
日時
平成26年7月23日(金)16:50~18:20
会場
発達科学部 B203(B棟2階)
報告
現代の中学校において生活指導実践を行っている恩庄澄氏を招き,ディスカッションを行った。リーダー層への期待,働きかけなどは,全国生活指導研究協議会で以前から重視されていたものであるが,それだけではなく,生徒との語りこみの重点が大きくなっていた。まず生徒の話を聞く,語りこむといったことをしないと生徒との関係を築くことが困難になるということが示されていた。聴講していた院生から,ワークライフバランス等の問題についての指摘も出された。(人間発達専攻 M1 佐川てるは)

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「概念変化研究からみた学習と発達」報告

講師
村山 功 (静岡大学大学院教育学研究科教授)
日時
平成26年7月25日(金)15:10~16:40
会場
発達科学部 A427(A棟4階)
報告
本講義では,教育学や心理学における概念変化の研究史とともに,教育研究における問題設定の重要性が論じられた。はじめに,心理学の分野において1980年代中盤に公刊された概念研究のレビュー論文により,概念表象の観点から(1)Rule View(2)Abstract View(3)Example View の3つに概念研究が分類されたことが解説された。この論文を通して,それ以降の概念研究のリサーチ・クエスチョンの方向性を決めるという,研究分野に大きなインパクトを与えるレビュー論文の意義について説明された。また,教育学の分野において1970年代終盤に初等物理学の基本的な概念が大学生に理解されていない事実が指摘され,学習者に教授された内容がそのまま習得されるのではなく,学習者の既有知識に基づいて学習されるという,概念変化研究が行われ始めた当初の問題設定が紹介された。これらの事例を通して,研究的に面白いリサーチ・クエスチョンとは何か,先行研究との論点を明確にする研究がいかに重要であるのか,などについて講師と受講者の間で議論が行われた。
筆者は,子どもの長期的な概念変化について研究している。本講義を受講したことにより,概念変化研究についての歴史的な背景を再認識するとともに,自身の問題設定の意義や価値についての論じ方について新たな知見を得ることができた。(人間発達専攻 M2 鈴木一正)

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「『可逆操作の高次化における階層-段階理論』に基づく青年期の発達保障」報告

講師
西垣 順子 (大阪市立大学准教授)
日時
平成26年7月28日(月)13:40~15:00
会場
発達科学部 大会議室(A棟2階)
報告
本講演では,田中昌人が提唱した「可逆操作の高次化における階層-段階理論」を素材にして,青年期を生きる大学生の発達の在り様について報告された。同理論は,人間の生涯に渡る発達を描いており,そこでの発達とは,人が環境に応じかつ働きかけながら,能力を高め,人格を肥らせていく過程である。そして発達保障とは,全ての人間の発達する権利を保障するために,教育,医療や福祉を整える思想や運動である。報告では,青年期における発達保障を検討するために,青年期の発達を素描することが必要であるという西垣氏の研究意識から,田中の著作から大学生という青年期の発達の在り様を整理された結果が報告された。すなわち見えない物事の法則性をとらえる力が14歳ごろから生じ,この力が,本質を解明しつつ,人間同士が連帯して,研究課題を創り出す展望を見出す力に展開していくことが,大学生時期の発達の中心となるのである。さらに,こうした力を生み出す機会や場を提供することが,大学教育の在り方であると西垣氏は指摘した。そこでは学問を通して,社会や世界の物事の本質を見つめ,それらを変革していく主体として大学生を位置付ける必要があることを述べられた。(人間発達専攻 D1 金丸彰寿)

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「教育制度研究における歴史と方法」報告

講師
三上 和夫 (神戸大学名誉教授)
日時
平成26年7月30日(水)16:30~18:00
会場
発達科学部 A427教室(A棟4階)
報告
本講義では,教育制度研究における「カテゴリーの活用」という知的方法論を機軸とし,研究姿勢や論文の体系的執筆等に関する講話を通して,実践的な研究力量向上への筋道をご教授いただいた。要点は以下の2点である。
第一に,戦後教育制度研究の系譜に触れる中で,具体的な論文名・研究者名が挙げられ,研究上の論争の意義やその読み解き方等に関して解説していただいた。院生という立場から改めて考えたとき,日常的な師や同志との,さらには学会での対話が重要であることを再確認した。
第二に,教育制度研究上重要な「カテゴリー」活用の方法論修得に向けた具体的方策についてご教示いただいた。戦後教育改革理念をそのまま教育制度の事実分析カテゴリーに転用することの問題性,さらには,教育制度の史的展開の追跡から得られる制度規範カテゴリー等に依拠するだけでなく,公権力や市民社会の諸力から教育の生活圏域への作用に目を向ける空間論的カテゴリーを開発・活用することの重要性が説かれ,教育制度研究における理論と実践の結合に関して重要な示唆を得た。(人間発達専攻 M2 小島倫世)

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「発生論的運動学の動感指導の考え方」報告

講師
三木 四郎 (神戸親和女子大学 発達教育学部 児童教育学科 教授)
日時
平成26年10月17日(金)17:00~18:30
会場
発達科学部 A325(A棟3階)
報告
本セミナーでは,発生論的運動学の観点から,子どもの運動習得および指導の構造を解説いただいた。私たちは運動を行う際に,自身の身体を動かしながら,その動きを感じており,さらに必要に応じてその動きの修正も行っている。発生論的運動学では,その動く感じを「動感」として,内的な視点から運動のコツを意識化,言語化しようとする。特に,動感を意識化することによって,他者と共有することが可能となり,運動の習得や指導の要点を明らかにすることができる。
子どもが動きを習得する過程として,5つの形成位相が存在している。最初にその動きを「やってみたい」と思う原志向位相から始まり,試行錯誤をする中で,コツを掴み,いつでもできるようになった後に,状況に応じて動くことができる自在位相へと到達する。習得の始まりである「やってみたい」という気持ちを引き出すことが大切であり,そのためにも,子どもたちが夢中になれるような遊びやその運動の要素を含んだ運動によって,子ども自身の中に動感を作り出すことが重要である。
運動指導に際しては,子どもが現在どの位相にいるかを把握しながら,順次移行できるように活動や環境を整えていかなければならない。さらに,教員自身がその運動における要素の組合せや系統を理解することによって,子どもの運動において,何が足りず,問題となっているかを常に探し出し,「できる」感じをもてる指導を行っていくことができると考えられる。(人間発達専攻 M2 辰巳純平))

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「コミュニケーションとしての博物館教育」報告

講師
小川 義和 (国立科学博物館/筑波大学客員教授)
日時
平成26年10月30日(木)15:00~16:30
会場
発達科学部 A427教室(A棟4階)
報告
地域社会との連携や生涯教育の推進等を背景として,現在の博物館の果たすべき役割は大きくなっている。本セミナーでは,博物館教育において先端的に研究を取り組んでいる小川先生をお招きして,博物館におけるサイエンスコミュニケーションの理論と実践についてご講義いただいた。
サイエンスコミュニケーションとは,教育機関,一般の人々,メディア,科学コミュニティなどが相互に関わり合って,それぞれの知識や経験を やり取りし,新たな知の創造・共有を行うことである。博物館は,このようなサイエンスコミュニケーションにおいて中心的な役割を担うセクター の1つであり,市民の科学リテラシーの向上に寄与している。
本セミナーでは,このようなサイエンスコミュニケーションを取り入れた実践が紹介された。具体的には,いくつかの博物館施設が連携して様々 な学習プログラムを実施し,そこでの学習内容をふり返り,共有するといった取り組みである。学習プログラムは,対象年齢や目的によって選択す ることが可能である.自分自身の博物館での活動をふり返ることによって個人の成長に繋がり,共有することによって知の循環が起こると期待され ている。
この講義を通して,自身の研究もこのようなサイエンスコミュニケーションを取り入れた学習プログラムの1つであることを再認識した。さらに,このプログラム内での学習内容が,他の場で活かされていくということも自身の研究の果たす役割の1つであると認識できた。(人間発達専攻 M2 山橋知香)

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「ポスターデザインのための基礎スキル」報告

講師
生田目 美紀 (筑波技術大学)
日時
平成26年10月30日(木)16:40~18:00
会場
発達科学部 A427教室(A棟4階)
報告
本講義では,学会等研究発表の場で作成するポスターやプレゼンテーションソフトで作成する画面について,そのデザインのための基礎スキルを学んだ。ポスターを見る人は視覚に頼っており,見やすいポスターを作るのは発表者のマナーであると自覚してポスター作成に臨むことが,「伝える伝わるデザイン」をするための重要な事項である。「伝える伝わるデザイン」の具体例は,以下のようになる。一点目は,読みやすいレイアウトにすることである。行間や字間,書体や改行に注意を払い,文字のサイズや太さに強弱をはっきりつけるようにすると伝わりやすさは高まる。二点目は,デザインの答えは一つではないと認識することである。状況によって最適なレイアウトは異なり,センスやスタンスも人によってさまざまであることへの自覚が必要である。
本講義時間内には,各受講生がこれまでに作成したポスターを持ち寄り,講師より直接アドバイスを受ける機会も用意された。講義内容は簡単にポスターに反映することができ,目に見えてポスターの視認性や可読性,判読性が向上した。筆者らは,研究の中間報告会や成果発表会を控えており,ポスター作成に取り掛かっている最中である。より質の高いプレゼンテーションにするための方法を得て,非常に意義深いことであった。(人間発達専攻 M1 神山真一)

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「PISAリテラシーの背景―リテラシー概念の展開を踏まえて―」報告

講師
樋口 とみ子 (京都教育大学准教授)
日時
平成26年11月21日(金)17:00~18:30
会場
発達科学部 A427教室(A棟4階)
報告
本セミナーでは,PISAリテラシーの歴史的展開を踏まえて,その概念についてお話いただいた。まず,日本のPISAの関心が,好意的なものから多様性を圧迫するもの,またPISAの中止を求める声が上がるなどの批判的な側面も指摘もされているという動向を押さえた。
次に,PISAの読解リテラシーについて焦点を当て,OECDが考える機能的リテラシー,批判的リテラシーについて確認した。その後,リテラシー概念の移り変わりを,機能的リテラシーのW.Sグレイ,批判的リテラシーのP.フレイレ,そしてフレイレの主張を発展してく形でH.Aジルーなどの主張を通じてたどった。
最後に,改めてPISAリテラシーには社会を問い直す弱さを指摘し,OECDの展望する「知識経済」を担うために「競争優位」に立つことができる能力としてPISAリテラシーを捉えることが可能であり,フレイレが提起した本来の批判的リテラシーからは乖離した概念となっていることが明らかとなった。そして,今後の課題として,社会の矛盾を読み解くための読解リテラシーを問う問題の必要性を述べ,その為にユネスコの「自由としてのリテラシー」と社会発展の関係を見ていきたいと述べられていた。
受講者の中で顕著だったのは,2点ある。1点目は,セミナーを受けPISAリテラシーのイメージが変わったということ。2点目は,フレイレの提起する課題提起教育つまり「問いを立てる」ことを意識する姿勢である。それぞれの研究分野から批判的リテラシーをそれぞれ意識すること,また教員として子どもに接する時に「問いを立てること」を意識することの難しさを指摘する点も挙げられていた。
セミナーの考察
リテラシーという言葉に馴染みのない人でも,よく分かるように説明していただいた。PISAリテラシーの特徴がこれからの「知識経済」において機能的であることを求めており,社会の矛盾を批判的に読み解くため視点の弱さを挙げておられた。PISAリテラシーを評価していく上で問題の立て方が本当に社会に求められていることなのか考え,これからの社会動向とPISAの今後の出題などを見ていきたい。また,私達自身も教員として「問いを立てて」物事を考える目をもつことの大切さを改めて感じた。(人間発達専攻 M1 佐川てるは)

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「教授・学習への学習科学アプローチ」報告

講師
大浦 弘樹 (東京大学大学院情報学環特任助教)
日時
平成26年11月28日(金)15:10~16:40
会場
発達科学部 A427教室(A棟4階)
報告
本講義では,教授・学習へのアプローチ手法として,学習科学の研究成果に基づいたデザイン研究(Design-based Research)について学んだ。主な講義内容は,(1)デザイン研究の特徴,及び(2)デザイン研究の課題であった。1点目に,デザイン研究の特徴として,テクノロジを含む多様な側面を考慮して授業をデザインし,目的に沿った多様な評価方法を駆使することが分かった。こうした評価を用いることで,デザインされた人工物や理論の構築など,多様なアウトプットが可能になることも把握できた。2点目に,デザイン研究の課題として,評価の妥当性や一般化可能性が挙げられた。これらの課題を解決しうる1つの手法として,傾向スコアという統計手法があることを学習した。筆者の博士論文では,小学校理科授業の議論に着目した授業研究を題材としており,そこではデザイン研究の手法を採用している。博士論文を作成する際には,デザイン研究の長所である学習プロセスの詳細な記述はもちろん,課題である評価の妥当性や一般化可能性を克服する方法についても模索していきたい。(人間発達専攻 D2 村津啓太)

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「遊びからはじまる演劇やダンス」報告

講師
ウォーリー木下 (演出家・劇作家)
日時
平成27年1月16日(金)17:00~18:30
会場
発達科学部 F164-1 身体表現スタジオ(F棟1階)
報告
本セミナーでは,演出家のウォーリー木下氏に,演技・演劇とは何か,演劇を使ってどんな発想が出来るのか,という視点から,主にワークショップを通してご講演頂いた。
まず「演じる」と聞いてどんなことが浮かぶかを順に挙げ,出された「台本」「役になる」「嘘・虚構の世界」などのキーワードから,「一つだけ嘘の情報を含んだ自己紹介」,「すべてが嘘の自己紹介」をする活動を行った。その後見ていてどう感じたか意見交換を行い,見ていた受講者からは,「淡々と言うと本当っぽく感じる」「自己紹介している人が,嘘でもその世界観を信じその世界を想像しながら話していると,真実味・リアリティが感じられ,だんだん本当の様に感じてくる」といった意見が挙げられた。
次に,3人ずつグループに分かれて「3人の意外な共通点を見つける」,さらに半分の3グループが「嘘の共通点での自己紹介」を行い,どのグループが嘘をついていたのかを当てるという活動を行った。グループそれぞれに大胆な設定でありながら,だんだん話に強いリアリティが感じられてきた事が非常に印象的であった。
最後に,ワークショップ全体を通じての意見交換を行った。「3人グループで行った時の方がやりやすかった」という意見から,これは,1人で虚構の設定を語る場合に比べて,他人と一緒に話す場合の方が,3人が同じ世界観を共有しているから信じやすいのであり,その世界観に見ている人が同化する「他人への共感」「自己と他者との共振」は,演劇の重要な作用のひとつである,とのお話をウォーリー木下氏から頂いた。さらに,「演じる」際に生じる観客と演じ手との間にある壁を演出によって取り除く必要性,また,演劇とは個々のテクニックではなく,他者との関わり・関係性から生まれるものの方が面白いものが生まれる,というお話も頂いた。
今日の学校教育で「演劇的な活動」というと,台詞を「読む」という事に重点が置かれることが多いように感じる。しかし,このセミナーの活動を通し,「他人への共感」「自己と他者との共振」といった他者との関係性を考えるという視点で演技・演劇という活動を捉えることにより,コミュニケーション・人付き合いについての学びにおいて,子どもたちにより人の存在の大切さについて考えさせる,演劇を通した指導の新たな視点を得ることが出来た。(人間発達専攻 M1 神谷 彩)

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「理科における科学的思考力:観察・実験結果を考察する力に着目して」報告

講師
松浦 拓也 (広島大学大学院教育学研究科准教授)
日時
平成27年2月6日(金)17:00~18:30
会場
発達科学部 A427教室(A棟4階)
報告
本講義では,理科における科学的思考としての記述活動に焦点を当てて,授業における学習実態や効果的な指導法について学んだ。主な講義内容は,(1)理科教育における記述活動の意義,(2)理科におけるレポート指導の実態,(3)記述力を育成するための実践例の検討,という3点であった。1点目に,学習者は思考するために言語を必要とし,記述する活動を通して自身のアイデアやイメージを客体化することを確認した。2点目に,理科の教科書にはレポートの書き方の解説は掲載されているものの,全体の構成を解説したものや,結果の記述例を記載したものなど,出版会社によって内容が異なることを知った。また,教科によってレポートの規範が異なることを知った。3点目に,有効な指導法として,問題解決の流れと思考を対応付けることや,良い考察の記述と悪い記述を比較検討させる活動などを把握できた。本講義を通して,理科における記述を充実させるためには,学習者の記述活動の実態を把握し,実態に即した具体的な指導が必要であることを再認識できた。(人間発達専攻 D2 村津啓太)

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「大規模調査に表れた日本の児童・生徒の科学的論述力の課題 ―科学的探究に焦点を当てて―」報告

講師
中山 迅(宮崎大学大学院教育学研究科教授)
日時
平成27年2月11日(木)15:10~16:40
会場
発達科学部 F256教室(F棟4階)
報告
本講義では,大規模調査に表れた日本の児童・生徒の科学的論述力の課題について学んだ。主な講義内容は,1)世界的に育成が求められている科学的リテラシーの具体 2)国際的な教育調査問題の具体と日本の児童・生徒の課題であった。1点目については,PISAでは,科学的な疑問を認識する能力や現象を科学的に説明する能力,科学的な根拠を用いる能力が科学的リテラシーとして定義されていること,TIMSSにおいては,知識・応用・推論が理科の認知領域として挙げられることを学んだ。それらの要求は確かに調査問題にもあらわれていた。2点目として,実際に調査問題を解き,正答例について解説を受ける中で,日本の児童・生徒には,実験計画を立てることやグラフを分析すること,理由について根拠を挙げて説明することに課題があることが分かった。それらに相当する問題の正答例からは,科学的な論述として,問題解決にはより丁寧な説明が求められていることがうかがえた。具体的には,主張を支える証拠(実験結果)のみならず,理由付け(証拠が主張を支える理由)が解答内に必要である。筆者も,小学生に対する科学的な論述力の育成,特に,アーギュメント構成能力に焦点を当てて研究を推進している。その構成能力の必要性を述べる章において,このたびの講義内容を参考に世界の調査問題を分析して行く。現在世界的に育成が求められている科学的な論述力を構成する要素を整理することで,研究の意義を深めていくことができると感じた。(人間発達専攻 M1 神山真一)

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