神戸大学大学院人間発達環境学研究科 大学院生の声2013


<心身発達専攻>

多様な視点から人間の「生」と「死」に向き合う

田中 美帆 さん(心理発達基礎論コース 前期課程2年生)

妊娠・出産を経験した女性がどのような生と死に対する態度を持つのか,それが私の最大の興味です。命を生みだすライフイベントは人間の一生の中で最も「生」を強く意識する瞬間ですが,同時に母子どちらにとっても命を懸けた闘いでもあります。このような「生」と「死」どちらにも関わるような経験が女性の生と死に対する態度に与える影響について,妊娠中からの変遷に焦点を当て研究しています。
私の研究テーマは国内では研究がほとんど蓄積されていません。方法論が確立されておらず,先行研究も少ないといった研究を進めるうえでの難しさもありますが,前人未到の頂に登るような研究の日々は私をワクワクさせてくれます。また,この研究科には私と同じく先駆者の少ない分野を研究する学生が多く,彼らとの活発な議論を通じて気づかされる部分も多いのです。たくさんの人に支えられ,研究という大きな頂をこれからも登っていきたいと思っています。


「一人ひとりを見るということ」

山﨑 美鈴 さん(臨床心理学コース 前期課程2年生)

私は「親になる」ことに関心を持っています。どんな体験をきっかけに,周囲との関係の中で,どのように意識されていくのか…。人それぞれ,その人だけの体験であるが故に,一人ひとりを深くみていくことの重要性と新鮮さを感じています。子育て援助を中心とした臨床心理学的援助を目指して本研究科に進学しましたが,病院,学校等幅広いフィールドでの実習や授業を通して,よりその人に寄り添った援助の在り方とは何か,日々考えさせられます。海外の研究者や他領域との交流も活発であり,国際シンポジウムやセミナーで話し合いや実践から知識を吸収し,新しい視点に拓かれていくのはとても楽しく刺激になります。「親になる」ことの発達や周りの関係を研究しながら,実践の場でその気持ちを受け止め,一緒に進んでいくための研鑽を積む。専門のみにとらわれない広い視野で研究と実践を繋げていけることに,やりがいと向上心を感じています。


先輩・後輩と研究室で過ごす一日一日が,私の財産です

堺 千紘 さん(健康発達論教育研究分野 後期課程2年生)

私は他大学の薬学部出身です。中・高等学校での医薬品の正しい使い方に関する教育について,薬学的観点からだけでなく教育学的観点からもその在り方について研究したいと考え,健康教育,行動科学をご専門とする川畑先生のもとで学んでいます。
川畑研究室では,青少年の健康にかかわる行動にはどのような社会的要因や個人的要因が関連しているのか,また青少年の健康的な行動を促進するためにはどういった教育が必要か,という問題を柱に,学部生・院生一人ひとりが研究課題をもち,調査研究や論文執筆に日々切磋琢磨しています。学部生・院生が取り組む研究課題は多様なので,お互いの研究について相談し合うことで,とても視野が広がります。研究を進めていく上では,学問的知識だけでなく,コミュニケーションも同じくらい重要だと思います。研究室で先輩や後輩と過ごす一日一日が,学問的にも,また人間的にも自分を成長させてくれる,この上ない財産です。

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<教育・学習専攻>

教育現場を助ける,
じわじわと効く漢方薬のような研究を。

宇賀神 一 さん(教育科学論コース 前期課程2年生)

私は昨年,宇都宮大学から本大学院に進学してきました。進学当初は環境の変化に戸惑いましたが,今では同級生や先輩と楽しく刺激的な毎日を送っています。
丁寧に指導してくださる教授陣が揃い,また貴重な資料が閲覧できる充実した環境のもと,私は「石森延男」という人物の歴史を研究しています。石森は戦前と戦後,日本と中国を跨ぎ国語教育に関わった人物です。8月からは,研究の一環として華東師範大学(中国・上海)に留学して資料収集を行う予定です。
「研究は現場の負担を軽くするものであれ」,そして「歴史研究は即効性がない。しかし,漢方薬のように後でじわじわ効いてくる」という師の言葉を道標に,研究を進めています。石森についての研究は,即座に教育現場の問題の解決には繋がらないかもしれません。しかし,常に現場の先生方の負担や悩みを視野に入れ,いずれ漢方薬のようにじわじわと効果を発揮する,息の長い研究をしたいと考えています。


自分の視野を広げられる
きっかけにあふれる場

黒西 希 さん(子ども発達論コース 前期課程2年生)

私は学部時代を音楽大学で過ごし,本研究科に進学しました。学部時代から幼児の音楽教育を専攻し,子どもにとっての望ましい音楽経験とはなにか,そのために周りの大人はどのような援助が出来るのかについて研究しています。学部時代は「音楽」というフィールドから「教育」や「子ども」を捉えていましたが,本研究科に進学し「教育」や「子ども」というフィールドから「音楽」を捉えてみることで,新しい知見,新しい視点を持って音楽教育を見つめ直せていると実感しています。このプロセスにおいて,様々な研究分野を持つ院生に囲まれて取り組む講義や演習,院生同士の議論は欠かすことができません。日常的に他分野の研究を行う院生と交流でき,新しい考え方に触れる機会に恵まれているという点は,本研究科の大きな魅力なのではないかと感じています。この恵まれた環境の中で研究に取り組むことができることに感謝し,より自分の視野を広げていきたいです。


「たくさん人と出会い,ともに学び合うことができるオープンな場所」

赤嶺 佑一 さん(発達支援論コース 前期課程2年生)

私は「ジェンダー視点でみる地域防災」を研究テーマとしています。自宅近所で発生した火災をきっかけに, 地域の防災活動におけるジェンダーに関心を持つようになりました。現在は,地域の消防団や防災福祉コミュニティの活動に参加しながら,ジェンダー視点から,これからの地域防災のあり方を追究しています。
地域の防災活動に関わる方々は年齢も職業も様々ですが,どの方も「どうにかして,この地域をもっとよくしたい」という思いを持って活動しておられます。こうした方々と一緒に,どうすれば災害に強いまちになるのか, 皆で助け合える地域をつくれるのかといったことを日々考えながら活動しています。
「このような問題関心で本当にやっていけるのか」と, 大学院進学を考え始めた時は非常に不安でしたが, 本研究科は多様な問題関心を持つ人たちが一緒になって,ともに議論し実践できる環境が整っており, いまはとても充実した大学院生活を送っています。

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<人間行動専攻>

スポーツを核とした人々の結びつきが生み出す力

稲葉 慎太郎 さん(身体行動論教育研究分野 後期課程3年生)

現代社会のスポーツを取り巻く環境は,トップスポーツから市民スポーツまで実に様々です。私は,スポーツ社会学を専攻しており,特に,“生涯スポーツ”を実現するべく育成が進んでいる総合型地域スポーツクラブを焦点に当てて研究をしています。このクラブでは,スポーツをする人はもちろんですが,子どもの試合を応援する人,指導者や事務局として日々の活動をささえる人,さらに,クラブへの協賛などで応援している地元の商店や地域団体など様々な人々が関わっています。このようなスポーツ現場を中心とした地域社会との多様な結びつきが,活動をより豊かなものにしていくといわれています。私は研究を通して,スポーツに様々な人が関わることによって生み出されるソーシャル・キャピタル(社会関係資本)について探求し,実際に活動現場に好影響をもたらすことを実証することで,より豊かな地域スポーツのネットワーク形成に貢献できればと考えています。


「世界的に活躍する研究者」を目指す!

天野 達郎 さん(行動発達論教育研究分野 後期課程3年生)

私は運動時におけるヒトの体温調節システム(主に発汗や皮膚血流反応)の解明とそれに対する運動トレーニング効果について研究しています。学部生の時に陸上競技をしていたため運動時の生体反応(特にトレーニング効果)に興味を持ち,学部の卒論から現在まで継続した研究を行っています。私にとっての研究の醍醐味は,世界で初めての知見を探求することや同じ分野における世界中の研究者と競争することです。研究では論文のインパクト(≒科学雑誌のレベル)と数が重要になり,世界中の研究者が競ってレベルの高い雑誌にチャレンジしています。私自身,博士前期課程で行った研究の一部が評価の高いアメリカの生理学雑誌に受理された時はとても嬉しかったです。一方で4回リジェクトされて苦労している論文もあります。私の目標は,世界的に活躍する研究者になることです.高い志と熱い気持ちを持った方が本研究科にチャレンジすることを期待しています!

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<人間表現専攻>

感性科学 -ヒトの持つセンスや印象,情動を科学する。

吉見 紫彩 さん(表現文化論コース 前期課程2年生)

私は高校,大学と芸術制作を行う中で,「感じる」とは何か?という関心が強まり,感性科学が学べる人間発達環境学研究科へ進学しました。ここでは,研究者だけでなくアーティストやパフォーマーが集い,影響し合うことで,自らの研究に「自分らしさ」を見出しています。私は現在,芸術鑑賞の際にタイトルが気になったり,自分の制作した作品のタイトルを考える時にあれこれ悩んだ経験をもとに,「音象徴」と呼ばれる現象について研究を行っています。音象徴とは,パ行は元気良い,ガ行は力強い等,ある音が特定のイメージをもつ現象です。今まで経験的に語られてきた音象徴を科学的に分析するため,「あ」~「ん」の日本語拍の印象や,視覚と聴覚の印象の差異,複数拍への応用可能性を検証しました。学会発表や論文投稿と大忙しでしたが,自分らしい研究ができたと感じています。
今後は,発声時の身体感覚の影響を探るべく,新たな実験を開始します。どんな結果がでるか,今からとても楽しみです!


新たな世界へと

花岡 麻里名 さん(コミュニティアートコース 前期課程2年生)

私が幼少から学んできたダンスや歌は,舞台上から一方的にパフォーマンスを行うだけではなく,それまで観客であった人々と互いに学びあい,発見しあい,深い気づきに至れることを知りました。大学院では,高齢者を対象に,週に一回神戸の老人ホームに通い,歌とダンスでのワークを実践して心と体の健康促進の研究をしいます。自分のやりたかった研究を実際に実践し,それを分析し学びことは,学部時代とは違う環境でとても面白く,有意義な院生生活を送っています。また課外では今年の8月から「神戸ウエディングクイーン」として神戸に幸せを運ぶお手伝いをさせて頂いており,色々な事に挑戦し,たくさんの方に出会い,新たな世界が広がりました。ここで蓄積した力は将来の自分をしっかりと支えてくれるものだと思います。

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<人間環境学専攻>

藻で地球を救えるか?
最先端の研究のスピードを感じて

吉沼 春香 さん(自然環境論コース 前期課程2年生)

人間活動とエネルギーの大量消費・化石燃料の枯渇―これらは切り離すことのできない重要な環境問題です。私はこの問題解決の可能性を秘めた「榎本藻」という藻類の研究をしています。この藻は光合成で吸収したCO2を用い,細胞内で重油を生産するのです。
代替エネルギーとして有用な藻でありながら,その遺伝情報は未知の部分が多く,他の藻類よりも成長速度が遅いため生存競争に勝てないといった問題もあります。この課題を解決するべく,遺伝子解析で得られた情報をもとに“自然に優しい遺伝子組み換えシステム”の確立を目指しています。
人間の存在抜きでは語ることのできない環境問題と,そのアプローチとしての藻ディーゼル。理学部でも農学部でもなく,この人間発達環境学研究科だからこそ出会えたテーマだと感じています。私たちの手で次世代エネルギーのブレイクスルーを起こせるか,研究のスピード感を日々感じながら課題に取り組んでいます。


いましかできないこと

大月 翔太 さん(数理情報環境論コース 前期課程2年生)

私は高校の数学の教員になるために大学院に進学しました。実際,学部を卒業して教職に就くこともできたのですが,数学の専門性を高め,そして数学を続けた先にどのような世界が待っているのかを体感することも将来教壇に立つ際に必要なのではと感じ,進学を決めました。時間をかけて数学を学ぶことができるのは“今しかできない”ということも進学を決断したきっかけでした。私の専門は位相幾何学で,とくに整数平面において近さや繋がり方を表現する“Digitaltopology”と呼ばれる概念について研究しています。実数平面で成り立つ図形の性質を整数平面でどのように再現できるのか,また結果をどのように応用できるのか,を考えています。
数学の文献はすべて英語ですし,学会で専門の先生方の発表を聞く機会など学部ではなかったものを体感しています。そして“発達”ならではの様々な分野の人との関わりによって自分自身も成長し,社会に出ていきたいと考えています。


地域の再生可能エネルギーを推計し
持続可能な社会をプロデュース

坂口 卓司 さん(生活環境論コース 前期課程2年生)

私が所属する都市環境システム研究室では,環境の側面から持続可能な社会の構築を目指して,再生可能エネルギー,ごみ,ライフスタイルに着目した研究を行っています。私の研究は,淡路島で再生可能エネルギーを導入することで,二酸化炭素・コストが現在と比較してどれだけ変化するのかを評価しています。評価手法には,物質フロー分析・LCAなどの考え方を用いて,数値として結果を示します。
しかし,数値化で終わったのでは,意味がありません。研究背景や社会事情を調査し,一般社会でも適用できる結論が求められます。このような研究プロセスこそが発達科学を象徴する「文理融合」だと自負しています。
私は学部での卒業研究をより深くやろうと思い,大学院に進学しました。大学院では,国内外での研究発表等,貴重な経験ができます。私も国内学会で二度研究発表することができました。少しでも研究がおもしろいと感じたなら進学することをおすすめします。


学際的で刺激的な研究環境

クーレタ・トアカイ さん(社会環境論コース 前期課程2年生)

私は南太平洋のキリバス共和国という小さな国からこの神戸大学に学びに来ています。専門は政治学で「キリバスの環境問題と政治過程」が研究テーマです。これまで受講した講義では非常に刺激的なディスカッションが交わされ多面的な見方や価値観を学ぶことができました。それを通じて私自身の研究課題を深めるだけでなく, 社会を構造的に分析する視点も養えました。学際的な講義内容はすべて私の研究の糧となっています。自分の興味ある分野だけでなく,様々な社会問題や理論を学んだことは研究を進める上で大いに役立っています。また将来帰国した後のキャリアにも生きてくるものだと感じています。複数の先生方からの研究上のアドバイスは自分の研究課題を深める大きな助けとなっています。留学生にとっては多くの日本人と知り合え,日本についてたくさん学ぶことができるのはとてもうれしいことでもあります。みなさんとキャンパスで会えることを楽しみにしています。

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案内パンフレット 『神戸大学発達科学部・神戸大学大学院人間発達環境学研究科2014』 より