神戸大学大学院 人間発達環境学研究科 挨拶・沿革


発達科学部長・人間発達環境学研究科長
岡田 修一 教授

21世紀,世界では科学技術の急速な進化を背景に高度情報化やグローバル化が急速に進み,人類のさらなる発展が期待できる状況にあります。反面で,この動きは価値観の衝突や富・知識の偏在をもたらす要因にもなり,その結果,世界のいろいろな地域で人間の自由な発達を阻害する事態が発生しています。わが国でも,少子高齢化が急速に進むなか,経済や雇用の状況が必ずしも安定せず,そのため,一人ひとりの人間が潜在的にもつ多様な能力を発現する場が狭められているという指摘もあります。

こうした状況を踏まえ,私たちには,持続可能な社会の創造を目指し,「人間の発達(human development)とは何か」「それはどうすれば可能か」という根本的な問いと向き合い,より実践的な観点から具体的な解を導くことが強く要請されています。むろん,容易な課題ではありません。人間の発達を真に捉えるためには,人間それ自身だけでなく,人間をとりまく環境にも注意深く関心をいだき,人類の叡智を結集しながら多面的かつ重層的に研究していくことが求められるからです。

人間発達環境学研究科は,まさにこの課題に応えるため,2007年4月に設立されました。本研究科は,「ヒューマン・コミュニティ創成研究」という理念に基づいて,文系・理系の理論を融合した学内外にある様々な知見を総動員し,総合的・実践的な観点から人間発達研究に新たな学問的地平を拓くことを目的とした大学院です。「ヒューマン・コミュニティ創成研究」とは,地域社会,行政,企業,NPO,NGO,市民など学外の多様な行為主体と密接に連携しながら,人間的な社会(ヒューマン・コミュニティ)の創成をめざす教育研究活動の総体を意味します。

そして,この理念を具体化するため,本研究科の教育研究活動は次の三つの特色をもっています。第一に,それは学際的・総合的であるという点です。複雑さを増す現代社会がかかえる解決困難な課題に対峙していくためには,専門の深化だけでなく,幅広い観点から持続可能な社会を展望し様々な科学を包摂していく「学術の総合力」が必要となることは,しばしば指摘されるところです。本研究科では,人間の発達を一人ひとりの人間の「善き生(well-being)」を実現するために個人や集団が潜在的にもつ多様な能力を開花させることと理解し,その視点から個々の専門領域を結びつけ,今日的な諸課題に対し多面的・総合的・包括的にアプローチする「人間発達環境学」を構築しています。第二に,それは実践的・応用的であるという点です。本研究科では,現代社会に生起する様々な問題につき,直接の当事者と協働して実践を試行しながら有効な解決方法を探求し,その成果をもとに解決プログラムを開発するアクションリサーチの手法を基本にすえ,既存の学問領域を越えた新しい実践知の創造を目指しています。特に研究科附属の発達支援インスティテュートでは,「大学と地域とを結ぶプラットフォーム」として学生・教員がこの手法を使い実践的な活動を広範に進め,教育と研究と社会貢献を一体的に進めています。第三に,国際的であるという点です。近年,大学のグローバル化が急速に進み,本研究科においても,海外の大学との学術交流が進んでいます。特に人間の発達とそれをとりまく環境に対する眼差しは,人々が実際に生きる場に起きる身近な問題に端を発しながら,しかし同時に,今日の国際社会において解決すべき喫緊の諸課題とも深くつながっています。本研究科では,いくつかの具体的テーマを掲げ,海外の学生,研究者,実践家等と問題意識を共有しながら調査研究や学術交流を進めるスタディツアーを積極的に実施し,教育研究の国際化を推進しています。

「人間発達環境学」はまだ始まったばかりですが,人類の諸課題と対峙する壮大な学問的プロジェクトともいえます。私たちは,教員と職員,そして学生諸君が一体となって,このプロジェクトに挑戦していきたいと考えています。熱意あるみなさんが,この学問共同体に参加されることを強く期待します。

年月 沿革
明治7年10月(1874年10月) 兵庫県師範伝習所設置
明治10年1月(1877年1月) 神戸師範学校と改称
明治19年4月(1886年4月) 兵庫県尋常師範学校と改称
明治31年4月(1898年4月) 兵庫県師範学校と改称
明治33年2月(1900年2月) 兵庫県第二師範学校を設置
明治33年4月(1900年4月) 兵庫県師範学校を兵庫県第一師範学校と改称
明治34年8月(1901年8月) 兵庫県第一師範学校を兵庫県御影師範学校と改称
兵庫県第二師範学校を兵庫県姫路師範学校と改称
明治35年2月(1902年2月) 兵庫県明石女子師範学校を設置
大正8年4月(1919年4月) 兵庫県立農学校甲種別科を設置
大正12年3月(1923年3月) 兵庫県立農業補習学校教員養成所として兵庫県立農学校甲種別科が独立
昭和10年6月(1935年6月) 兵庫県立農業補習学校教員養成所を兵庫県立青年学校教員養成所と改称
昭和11年4月(1936年4月) 兵庫県御影師範学校と兵庫県姫路師範学校を兵庫県師範学校として統合
昭和18年4月(1943年4月) 兵庫師範学校として兵庫県師範学校と兵庫県明石女子師範学校を包括し官立移管
昭和19年4月(1944年4月) 兵庫青年師範学校として兵庫県立青年学校教員養成所を官立移管
昭和24年5月(1949年5月) 兵庫師範学校と兵庫青年師範学校を統合し神戸大学教育学部として発足
昭和40年4月(1965年4月) 神戸大学教育専攻科を設置
昭和56年4月(1981年4月) 神戸大学大学院教育学研究科修士課程を設置
平成4年10月(1992年10月) 神戸大学教育学部を改組し,神戸大学発達科学部を設置
平成9年4月(1997年4月) 神戸大学発達科学部と神戸大学国際文化学部を基礎とした神戸大学大学院総合人間科学研究科修士課程を設置
平成11年4月(1999年4月) 神戸大学大学院総合人間科学研究科博士課程を設置
平成17年4月(2005年4月) 神戸大学大学院総合人間科学研究科発達支援インスティテュートを設置
平成19年4月(2007年4月) 神戸大学大学院総合人間科学研究科を改組し,神戸大学大学院人間発達環境学研究科を設置
平成25年4月(2013年4月) 神戸大学大学院人間発達環境学研究科の4専攻(心身発達専攻,教育・学習専攻,人間行動専攻,人間表現専攻)を改組し,人間発達専攻を設置